.aiドメインは成長したのではありません。爆発したのです。 2018年、webatlaが記録した.aiの新規登録は年間で10,807件でした。月あたりにするとおよそ900件という、のどかな小さなccTLDにすぎませんでした。2025年には、その数は478,794件に達しました。同じTLDでありながら44倍以上の規模になったわけですが、その転換点は、世界がチャットボットと会話を始めた時期とほぼ一致しています。
これは、カリブ海の国別コードドメインがAI時代の「既定のアドレスバー」になるまでの物語です。すべてwebatla独自の月次新規登録データだけをもとに語ります。以下の数値はwebatla自身のシリーズデータであり、推定値でも、第三者の集計を経由したものでもありません。

静かな時代(2018年〜2021年)
その歴史の大半において、.aiはちょっとした話題にすぎませんでした。これは、カリブ海に浮かぶ英国海外領アンギラの国別コードドメイン(ccTLD)で、1995年2月16日にIANAによって委譲されました。この2文字がたまたま「人工知能(artificial intelligence)」の略称とも一致していたことは、後述するように年間数千万ドルの価値を持つ偶然でした。
とはいえ、長らく誰も注目していませんでした。以下は、その初期のデータの推移です。
| 年 | .ai新規登録数 | 月平均 |
|---|---|---|
| 2018年 | 10,807 | 901 |
| 2019年 | 11,850 | 988 |
| 2020年 | 17,446 | 1,454 |
| 2021年 | 21,097 | 1,758 |
2018年は横ばいの状態で、年間を通して月あたり800件から1,100件程度の登録にとどまっていました。パンデミックがこれを後押しし、2020年にはウェブ全体の拡大とともに月平均1,454件へと上昇、2021年もその流れを引き継いで1,758件まで伸びました。堅実で、自然な、地味な成長です。もし2021年の時点でドメイン投資家に「このTLDはやがて大半のレガシーgTLDを新規登録数で上回るようになる」と伝えていたら、鼻で笑われていたことでしょう。
転換点:2022年後半とチャットボット
ChatGPTは2022年11月30日にローンチしました。その影響は、わずか数週間でデータに現れています。
2022年12月の.ai新規登録数は3,868件でした。この時点ですでに最初の明確なスパイクで、その年の月平均2,238件を大きく上回っています。続く2023年1月は6,715件に達しました。12月から1月にかけて月次で+74%の急増です。ホリデーシーズンでもなく、レジストリのプロモーションもない中での急増であり、世界中が「ai」という2文字がテック業界で最も価値ある文字列になったことに、突如として気づいた結果にほかなりません。
年間の比較を見ると、いまだに誤植ではないかと疑いたくなる数字が並びます。
| 年 | 合計 | 月平均 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 26,851 | 2,238 | — |
| 2023年 | 141,620 | 11,802 | 約5.3倍 |
| 2024年 | 244,799 | 20,400 | 約1.7倍 |
| 2025年 | 478,794 | 39,900 | 約2.0倍 |
2023年の月平均11,802件は、2022年の月平均2,238件のおよそ5.3倍です。このTLDは需要にゆっくり合わせて成長したわけではありません。ある一つの消費者向けプロダクトが「AI」を日常語に変えた瞬間、一気に押し上げられたのです。これは、ドメインデータの中でも屈指の明快な「単一イベントによるシグナル」の一つです。だからこそwebatlaは、TLDごとの新規登録をリアルタイムで追えるデータセットを提供し続けています。
新たな高原状態、そして記録的な急伸
注目すべきは、2023年が弾けて終わる一過性のバブルではなかったという点です。新しい水準はそのまま維持され、さらに上昇を続けました。2024年は2023年からほぼ倍増して244,799件、2025年はさらにほぼ倍増して478,794件に達しています。これは単独で2018年の年間合計の44.3倍にあたります。2018年から2025年にかけての年平均成長率(CAGR)は、およそ**年72%**という計算になります。
そして2026年に入ると、勢いはさらに加速しました。
| 月(2026年) | .ai新規登録数 |
|---|---|
| 1月 | 46,081 |
| 2月 | 60,818 |
| 3月 | 71,227 |
| 4月 | 25,715 (暫定) |
| 5月 | 9,104 (暫定) |
2026年3月の71,227件は、webatlaの.aiシリーズ全体を通じて過去最多の月です。記録上のオールタイムピークでもあります。この全体の軌跡をひとつの数字にまとめると、2018年1月から2026年5月までの累計で、このシリーズには1,166,209件の.ai新規登録が含まれています。
正直に伝えるべき注意点
先ほどの表をもう一度見ると、3月の記録のあとに4月(25,715件)と5月(9,104件)が急落しているのがわかります。これを.ai需要の減退と読み取ってはいけません。 本稿執筆時点は2026年6月22日で、登録データが確定するまでには時間がかかります。データ収集には遅延があり、記録の到着が遅れるケースもあり、直近数週間分の照合はまだ完了していません。直近の1〜2か月分はほぼ確実に未確定で、AIドメインブームが終わった証拠ではありません。このシリーズの過去の月もすべて時間の経過とともにデータが積み上がってきており、今後も同様です。webatlaは、不完全なデータを静かに隠して曲線がなめらかに見えるようにするより、はっきりとフラグを立てたうえで開示することを選びます。
.aiの正体、そしてアンギラにもたらされた思わぬ恩恵
きれいなグラフだけでは終わらない理由があります。カリブ海の小さな政府が、AIブームを財源にしているのです。
.aiのネームスペースはアンギラ政府が保有しており、記録上のスポンサー組織としてポリシーを定めています。およそ30年間、レジストリの運営を担っていたのはヴィンス・ケイト氏です。1990年代半ばに同島へ移住した米国人で、本人の証言によれば、IANAのジョン・ポステル氏からこのccTLDを託され、収益の大半を政府に納めてきました。2024年初めのインタビューでケイト氏は、レジストリの規模を「月間およそUS$300万」、「すでに政府予算の3分の1ほど」と表現しています。
IMFの試算では、2023年の.ai関連収入は約EC$8,700万(米ドル換算でおよそUS$3,200万)に上り、アンギラの政府歳入全体の20%強を占め、2024年には約US$3,900万まで増加しました。2024年後半にはこのTLDの登録数が50万件を突破し、政府はバックエンドのレジストリ業務を、数百のgTLDを手がける米国企業Identity Digitalに委託する5年契約を締結しました(2024年10月15日発表)。Identity Digitalは2025年1月15日に運用を引き継ぎ、収益のおよそ90%をアンギラに還元しているとされています。
実際に.aiドメインを登録する場合に知っておくべき、実務上の特徴が2つあります。
- .aiは最低2年契約が必須で、2年から10年まで選択できます。1年契約のオプションはありません。
- 居住要件はありません。 アンギラのccTLDですが、世界中の誰でも登録可能です。セカンドレベルでのオープン登録は、2009年9月15日から世界中で利用できるようになっています。
ドメインを追跡する立場から見えてくること
投資、ブランド保護、競合調査、あるいは単なるトレンド観察など、仕事としてTLDを注視している人にとって、.aiは「新規登録データが静的なスナップショットに勝る」ことを示す教科書的な事例です。ある一時点の件数だけを見れば、.aiが「大きい」ことはわかります。しかし、それがいつ大きくなったのか、どれくらいの速さで、そして今もカーブが上向きなのかを教えてくれるのは、月次のシリーズデータだけです。このタイミングこそがシグナルなのです。
同じアプローチは、次なる「.ai」が誰の目にも明らかになる前に浮かび上がらせてくれます。2019年から2021年の.aiがそうだったように、月あたり900件から1,700件へと静かに歩みを進めているTLDこそ、注目に値する存在です。そして、それを見つけられるのは、見出しに反応するのではなく、新規登録数を月次で追い続けている人だけです。
あるTLDがレーダーに入ったら、次に気になるのはそのドメインの裏側です。各サイトが何を使って構築されているか、そして各ドメインの登録記録です。ゼロから始める場合は、アクティブなドメインの全リストをダウンロードする方法のガイドで、現実的な選択肢を確認できます。また、.aiが他のドメインの中でどのような位置にあるかを知りたければ、いつでもTLDディレクトリ全体を閲覧できます。
よくある質問
.aiは本当にAIのためのドメインなのですか。 いいえ、そこが面白いところです。.aiはカリブ海の英国海外領であるアンギラの公式な国別コードTLDであり、1995年からそうであり続けています。「AI」という意味は、市場が乗っかった幸運な偶然にすぎません。
.aiの登録数は2026年に実際に減少しているのですか。 いいえ。データ上、2026年4月と5月の数値が低いのはデータが未確定だからです。本稿執筆時点(2026年6月22日)でも、直近の月はまだ確定していません。直近で最も確定度の高い月である2026年3月は、71,227件と過去最多を記録しています。
なぜ.aiは他のドメインより高いのですか。 レジストリが最低2年の登録期間を義務付けており(1年契約では購入できません)、また.aiはアンギラ政府にとって重要な収入源であり、その収益の大部分は政府が受け取っています。
webatlaはこれまでに.aiの新規ドメインをいくつ記録していますか。 2018年1月から2026年5月までで、このシリーズには1,166,209件の.ai新規登録が含まれており、そのうち2025年単独で478,794件を占めています。
データを入手する
この記事はまるごと、webatlaが毎日更新しているデータから抜き出した1つのTLDにすぎません。All Active Domainsデータセットをダウンロード →すれば、.aiを含むすべてのTLDにわたる、稼働中のドメインすべてをクリーンなJSONLとして、一律€29で入手でき、好きなように加工できます。もし探しているのが.aiの転換点を捉えたような早期警戒シグナル、つまり新規登録そのものであれば、Domain Investorデータセットは、今まさに勢いを増しているTLDを追跡するために作られています。あるいは、全データセットを閲覧して、他に組み合わせられるものを確認することもできます。